MOSAIC.WAV×鶴田加茂「Heartsnative」

Heartsnative (初回限定版)

Heartsnative (初回限定版)

 うおお。これはモザイクウェブにとっても初音ミクにとっても決定打な一枚。
 人とコンピュータ(A.I.)の共存、仲良く付き合っていくにはどうしたらいいの? というのが一枚を通したテーマ。ここに出てくる初音ミクは完全に一個のボーカロイドとして存在する。ソフト音源ではない。サンプリング的な使い方は少なく、ミクは気持ち良く歌っている。ミクをキャラとして愛するファンにはたまらない作品ではないだろうか。
 音楽的には今までのモザイクがやってきた派手なテクノポップ路線。それにしたってこの気合いの入り方はすごい。本気で音楽をやってきたプロが本気で取り組んでいることがありありとわかる全力ストレートの7曲。
 みくみくのフルはアレンジ入りまくって完全に別物。原曲をそのまま長くしたものを期待していた人には残念かもしれないが、別物だからこそ素直に受け入れられるのではと思う。『***にできたかな』は人間ボーカルをあえてボーカロイドに近づけるという面白い試みの一曲。柏森さんの声、最初は普通にカイト使ってると思ったよ。過去曲のアレンジ『電気の恋人』『キミは何テラバイト?』はどちらもすごく好きな曲だったので期待していたが、原曲とはかなり変わったアレンジで、ボカロでアカペラやったりするのには驚いた。モザイクがたまに作る切ない系の曲『server error』も名曲。そしてリード曲の『HATSUNEtive』。これは本当に普遍的で良くできたポップ。最後に『Mimic me.』でしっとりと感動的に〆。


 モザイクの音楽が持つド直球なポップ感は広く一般に受け入れられるポテンシャルがあるなあという感覚が個人的にはあって(『片道きゃっちぼ〜る』とか感動するよね)、だから『アキバポップ』を自称して、意図的にオタク方面にしか売らない彼らの戦略には若干歯がゆくも感じていたんだけれど、今回がブレイクスルーになればいいなあ。