笑顔の裏に、ちょっとの切なさ 荒井チェリー「未確認で進行形」
未確認で進行形 (1) (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)
- 作者: 荒井チェリー
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2010/07/22
- メディア: コミック
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フォーマットはいわゆる押しかけ女房、いや夫モノ。いきなり許嫁の存在を明かされて戸惑うヒロインと、超絶無口な当の許嫁。この二人に互いの姉妹を合わせて計4人で大体の話は進行します。
(作者としては)意外なことに、真正面からラブコメやってるんですよね、この漫画。あとがき読む限り、意図的だと思うのですが。前々から荒井チェリーのラブコメが読みたい読みたい言ってきた僕としては、もう驚喜乱舞ですよ。「せいなるめぐみ」といい本作といい、いやもう本当に幸せですね。
キャラもこれまで同様、いやそれ以上に良くて、特にヒロインの姉・紅緒のぶっ飛び方は特筆すべきと思います。女版山Gとでも言うべき振り切れ方をしています。そして主人公はきちんとヒロインらしい、って荒井チェリー作品でそれはびっくりですよ。
ただ、単なるラブコメでもない、ってところが本作の肝心な点です。
切ないんですよ。この漫画。
どのキャラクターにも、表には出さない意図や背景があって、それは大抵悲劇だったりするものだから、どんなに楽しげなコメディを繰り広げていても、どこかカラッとしていない。なんとも言えない切なさが漂っているんですね。そこが、これまでの著作と大きく異なる点じゃないかな、と。
例えば紅緒の異常な妹可愛がりも、「過去にいろいろあってね」と理由付けされてしまうと、もうそれだけで胸にぐっとつまるものがあるわけで。
そういうものを描くようになったというのは、確実に作家として幅を広げていると思うのです。
「せいなるめぐみ」以上に自らの殻を破ろうとする意思を感じて、もうそれだけでファンとしてはたいへん嬉しい、という本作でした。もちろんファン以外の人にもオススメします。なんだか普通とはちょっと違った雰囲気の4コマを読みたい人は是非。