パーダ『魔道』(web漫画)

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 魔道、というweb漫画を読んだのだった。3300P強あるのだけれど、6時間かけて一気読み。いやあ、やばいね、これ。 笑って泣けて、最後はやっぱり笑える、本当に気持ちの良いファンタジー
 立ち位置としては「マテリアル・パズル」に近い。ファンタジー世界で異能力者たちがバトルを繰り広げるという。絵があまり上手くない(ただし漫画を描くことには非常に適している)のも似ている。人間同士はあまり戦わない、ってのがちょっと違うかもしれない。
 設定とかいわゆる「王道」ってやつで、新鮮味は無い、ように一見思えるのだけれど、読むとそれだけではない何か新しさを感じる。正体がつかめないが確かに今までの同系統の漫画とは異なっている。そんな気配が、特に序盤〜中盤までは濃厚に漂っている。中盤以降はそこら辺が薄れていって普通っぽいバトル漫画になるんだけれど、それでもしっかり面白いから止め時は見つからない。
 あと伏線の張り方が上手い。かなり予想を裏切る展開が連続するのだけれど、伏線がきちんと張ってある(ことが多い)から、「あのシーンがここで生きてくるのか!」といった心地良い驚きをもたらしてくれる。世界観もかなり作り込まれていて、特に魔道師の歴史などは良く作られている。信じられるか? これ、週刊連載ペースで書かれてたんだぜ……? おそらく開始前に相当練り込んだのだろうと思う。
 キャラクターもいちいち素晴らしい。まず主人公の少女リントが大変けなげで良い。自分の運命や背負わされたものにきちんと悩みながらも、最後には前を向いて歩みを進める。これぞ主人公ってものじゃないか。準主人公的存在のブラウンとメッシュも、それぞれ異なった性格をしていて違った魅力がある。個人的にはぶっきらぼうだがいざというときはきちんと活躍するメッシュが好きだ。素直にかっこいいと思える。サブキャラも含めて捨てキャラ的存在がほとんどいないのにも驚かされる。ちょっとしたキャラにも愛らしさがある。
 そして悪役! これがもう本当に理想的な「悪役」。とことん非道でどう考えても憎むべき相手なのだけれど、相手には相手の事情、苦しみがあるのだということをちゃんと描いているから反吐の出るゲスになっていない。どいつもこいつも(ある意味で)気持ちの良い奴らなのである。
 といったように、面白いと思われる要素を幾つか自分なりにピックアップしてみたが、しかしそういう理由だけで「面白い」と感じた訳ではない。じゃあどこが面白いの? この質問に僕は「よくわからない」と答える外ない。演出力は確かにある。設定も練り込まれている。キャラも魅力的だ。でもそれだけじゃない。そういった部分で計れない「何か」がこの漫画の特異性であり、他の漫画では見ることのできないものである(それが先に述べた「新鮮味」であると思う)。優れた漫画には必ずそういう言葉では表せない部分があり、そしてそれこそがその漫画への愛着へとつながる。 面白い漫画は世の中に山ほどあるが、愛着のもてる漫画というのはそうはない。
 つまり、何が言いたいのかというと、僕はこの漫画がものすごく好きだ、ということ。そしてできれば他の人にも読んでもらいたいということ。