桜庭一樹『少女には向かない職業』

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)

 中学2年生の1年間で、あたし、大西葵13歳は、人をふたり殺した。
 二人の少女は、壮絶な「闘い」の果てに何を見るのか。

 女子中学生の揺れ動く繊細な心が限りなく最悪な形で発露してしまったらどうなるのか、という小説ですね。なんといっても、人をふたりも殺してしまうわけですから。
 思春期の少年少女は、その自分ですら自由にできない自らの心ゆえ、普通に生活する中でも何かしらと闘わざるを得なくて、それは例えばエゴを押し付ける両親だったり、頭ごなしにしかりつける教師だったり、嫌いな同級生だったり、思うようにならない現実だったりするわけです。そういったことを見事に描いた作品だと思います。ふたりの少女は、結局「何と」闘っていたのか。もはやどうしようもない最後の一文では悶え苦しむこと必死です。
 思春期に何かと闘った記憶のある人は是非読んでください。そうでない人もおもしろいので読みましょう読みましょう。