北村薫『ニッポン硬貨の謎』

ニッポン硬貨の謎

ニッポン硬貨の謎

 熱烈なオファーによりついに来日したミステリー作家にして名探偵エラリー・クイーン。わずか1、2週間の滞在期間の中で、彼は連続殺人事件の謎を解明していた! クイーンの未発表原稿を北村薫が翻訳した、という体で描かれる、クイーンファン必携の書。

 えーと、当方クイーンのことなんかまあーったく知りませんが(中学生のときに『Yの悲劇』を読んだのみ)、それでも十分楽しめました。よくわからない部分をさくさくと切り捨てて読んだのが功を奏したのかもしれません。翻訳調で持ってまわった表現をする(らしい)クイーン文体のパスティーシュと言いつつしっかりと読みやすいし、真ん中の『シャム双子の謎』論も、『シャム双子』を読んだことのない読者にも配慮してある書き方がなされていて、素直に論の内容に感心できました。
 何より、この本には北村薫の魂が込められています。本気の魂が込められた作品というのは、それだけでおもしろいものなのです。たぶん。