鳥飼否宇『痙攣的 モンド氏の逆説』

痙攣的

痙攣的

 後世に名を残す革命的ロックバンド「鉄拳」の、一夜限りの伝説のライブ。衆人環視の中メンバーたちは忽然と姿を消し、ステージにはプロデューサーの死体だけが残された! 「廃墟と青空」他4編を収録した奇妙な連作短編集。

 はっはっはっ。ナニコレ?


 鳥飼否宇は初体験でしたが、いやあ、わけがわかりません。とりあえず作者がちょっとオカシイことだけはわかりました。
 初めの一編はサプライズ十分の本格ミステリー。しかしその後がだんだんおかしくなっていきます。「闇の舞踏会」では理解しがたい前衛芸術の論理が跳梁跋扈するし、「神の鞭」では、一応本格ミステリーのようには見えますが、なぜか主人公がえらいことになってしまいます。しかしここまではまだまだ序の口でした。
 問題は最後の二編。
 「電子美学」では、はっきりとはわからなかった先の三編のつながりがようやく明かされ、ああそうだったのか! と納得……しそうになりましたが、よく考えるとこれ全然つながってないんじゃないか? そんな疑問を無視して、話はとある奇妙な設定下における殺人事件へとシフトします。推論をぐるぐるぐるぐると空回りさせた挙句、最後に全てを無へ帰すありえない新事実発覚! 読者ポカーン。そして「人間解体」で鳥飼さんは遠くへ逝ってしまわれたのでした。サヨウナラ……


 全部読み終えたところでまったく理解ができずに戸惑うばかり。そんな異形のミステリーでした。斬新な体験がしたい方は読まない手はないような気もするようなしないような。
 ていうかなんでイカなんですか。