古橋秀之『ある日、爆弾がおちてきて』

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)

 ある日突然空から落ちてきた自称「爆弾」はなぜか昔好きだった少女の形をしていた――「ある日、爆弾がおちてきて」ほか、7つの奇妙なボーイ・ミーツ・ガール。


 いやーおもしろい。古橋は小説上手いなあ。
 (基本的には)普通の少年と奇妙な少女のボーイ・ミーツ・ガール兼SFという縛りの緩さのためか、各短編が本当に多種多様で唸らされます。構成も短いなりにしっかりしてるし(「おおきくなあれ」の幕切れとかすごいと思う)、文章は上手いし。もっとメジャーになってもいい作家だと思うのですが。(といいつつこれと『ブラックロッド』しか読んでなくてすいません)
 味付けのようにトッピングされた「もうちょっとでラブコメになるよ」感に僕はやられてしまいました。ベッタベタなラブコメも悪くないけど、こういうのもいいですね。
 個人的ベストは「恋する死者の夜」。明るさと暗さがない交ぜになった雰囲気が独特で、レベルの高い作品群の中でも一際異彩を放っています。
 いつまでも手元に置いておきたいと思わせる、誰にでも安心しておすすめできる短編集です。