森山東『お見世出し』

お見世出し (角川ホラー文庫)

お見世出し (角川ホラー文庫)

 壮絶。


 京都を舞台に繰り広げられる三つの恐怖譚。第11回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作ほか二編。
 受賞作の「お見世出し」も、「お化け」もそれなりに良いのだけれど、最後の一編「呪扇」で全てがぶっ飛ぶ。
 まさに「地獄の鬼でもなければそんな恐ろしいことを考えつくまい」という光景が繰り広げられる。登場人物は人の心を失い、残虐な所業が恐ろしいまでに機械的に行われる。
 肉体的苦痛が読者の脳を通して伝わってくるほどの迫力溢れる描写は衝撃を与えること必死。漂う負のオーラに読者は取り込まれてしまうだろう。最後の畳み掛け方も完璧と思われる。
 これがホラー大賞応募作だったら短編賞どころか大賞も取れたのではなかろうか。