入江亜季『群青学舎 (1)』

群青学舎 一巻 (ビームコミックス)

群青学舎 一巻 (ビームコミックス)

 妙に躁な教授の実験に付き合わされることになった助手2人。ハート型の「惚れ薬」を2つに割ってゴクン。さて何が起こるやら……「ピンク・チョコレート」
 事あるごとに静間の所へ金を借りに来る優等生、漣子。常に金に困る彼女には何か事情があるらしく……「白い火」
 その他多種多様の全8編を収めた、脅威の新人入江亜季初の短編集。

 うわわわわ。すごいすごいすごい!
 読みながら何回も叫んでしまうなんて体験は何時以来だろう。常日頃僕は傑作傑作言い過ぎている訳ですがまたも言ってしまいます。傑作! 少なくとも怠け者の僕が思わず久しぶりに日記を更新してしまうくらいには傑作です。
 最初に読んだ「ピンク・チョコレート」が何かもう僕の好みの要素ばかり集めて固めたみたいな作品で、素晴らしく幸せな気持ちになったのですが、その他の短編も軒並み面白いのには参った。内容もまた色々で、にやにやが止まらない話、雄大な自然描写に息を呑む話、怒りの感情を喚起させる話などなど。どれもこれも傑作と言って良い出来で、こんなものを月間連載している入江亜季は異常です。絵の(昔の少女漫画のような)古臭さが少々鼻につく人がいるかも分からんですが、そんなもん僕はいくらでも目をつぶっちゃいますよ。上手いのは確かなわけですし。
 特に、それまでの(やや多かった)コメディな物語作りをくるりと反転させたかのような前中後編「白い火」に見られる激情の迸りっぷりには衝撃を受けました。秘められた意志の強さを感じさせる漣子の表情が良くて良くて。そしてP204、漣子が己の間違いを自覚するシーンの鮮烈さといったら!
 でもまあ、やっぱり「ピンク・チョコレート」方面の方が好みではあるわけですが。ああ、言い忘れてましたがこの作品、表紙や宣伝内容から感じ取れる(かもしれない)マニア受けするような堅さ・気難しさは微塵も無いのでご安心を。むしろもっともっと軽やかで楽しくなるような話が主です。あと女性たちが軒並み可愛い。これは重要なことですよ!
 様々な驚きと衝撃と、そして心地よいニヤニヤがほしい方、読まない手は無いです。いや本当。