川原泉『笑う大天使』(全2巻)

笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)

笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫)

 聖ミカエル学園はお嬢様学校。「ごきげんよう」「ごきげんよう」てなもんですよ。そこに紛れ込んだ猫被り少女3人。ごまかしごまかし何とか「お嬢様」を演じてたものだから、お互い背負った猫が見えたらもう親友です。
 え、学園内で誘拐事件? 何か一波乱でもあるんですか?

 初期設定だけ見れば「カレカノ」と同じ路線かなーと思わなくもないのですが、中身は殆ど別物。彼女たち3人が猫を捨てるのは、「自分を偽るのが嫌になったから」とかそんな高尚な理由ではなくて、ただ「仲間が見つかったから」「新しい家庭に慣れたから」なのであり、結局最後まで他の生徒には猫被りのまま。ここらへんが川原泉の作家性なのだろうなあと思うわけです。のほほーんと高校時代を謳歌する3人の何と素敵でほほえましい事! ええなあ。ええなあ。
 本編終了後に外伝が3つ掲載されていて、またこれがどれも面白いんだ。色恋沙汰など微塵も無く、そんなものよりもっと強い結びつきも人間にはあるのだ、と堂々と書いてしまう。少女漫画としては異例なのでしょうか。とりあえず男女やら年代やら全く問題なく楽しく読める作品であるのは間違いなく。
 最後の最後、簡単に紹介される3人のその後。おかげで僕は何だか幸せになって、気持ちよく本を閉じることが出来たのです。ワンダホー。