辻村深月『ぼくのメジャースプーン』

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

 ぼくの自慢の友達、ふみちゃん。他の子とは違う、ぼくにとってちょっと特別な存在。
 惨殺されたうさぎたちを見てふみちゃんの心は壊れた。
 犯人は近所の医大生。
 ぼくに宿る不思議な「力」。それを使って犯人に復讐するとぼくは誓った。
 でもちょっとまって。
 なぜ?
 どうしてぼくは復讐なんてするんだろう。「力」を使うと決めたんだろう。

 辻村深月初体験。いやー素晴らしい。ダヴィンチの紹介文を読んで即買いに走った僕の直感もまだ捨てたものではないということでしょうか。


 はっきり言っちゃってある程度までゴールは予測がつくわけで、後はそこにどうたどり着くかなわけですが、これがずっとその「力」について議論を重ねるだけなんですね。しかもそれは設定的な面のみならず、「力」を使うとはどういうことか、なぜ「力」を使うのかといった倫理的な面にまで及ぶ。普通はこんなこと書きません。「力」は「力」で使用して終わりです。だからこそこの小説は新鮮に思えました。
 まあ凡百の作家がこれを書いたらダレダレになること必死ですし、実際本作においても少々ダレてはいるのですが、しかしそれもこれも怒涛のラストのため。主人公が最後に選んだ選択、そしてそこに描かれる心理描写は、中盤の丁寧な議論があるからこそ圧倒的な説得力を持って読者の胸に響きます。ふみちゃんのためだけを思って一途に戦う主人公。そしてその真意。これは泣けます。というか僕は泣きました。


 あーもう、本当に、素晴らしい作品を紹介するのは難しい! 自分の文章力の無さをもどかしく感じます。まずはとにかく一読をおすすめします。大丈夫です。傑作ですから。