東野圭吾『容疑者Xの献身』

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

 100年に1人の天才と言われながら不運が重なり高校の数学教師に甘んじている石神。ある日彼は、自分が密かに心を寄せる隣人の母娘が殺人を犯してしまったことに気づく。何とかして、彼女たちを助けなければ――

 人は、これほどまでに人を愛することができるのか。


 東野圭吾の最新刊は、評判どおりの大傑作。
 まず設定からして熱い。恋した女性を助けるために編み出す完全犯罪。天才同士の対決。これだけでも、普通に展開すれば面白くなるわけだが……
 しかし、しかし、しかし――
 こんな犯罪が、ありえるのか。
 トリックと物語の幸福な融合。巧妙に隠された大トリックが明かされた時の衝撃は、そのまま感動へと繋がる。史上これほどまでに切なく、心を揺さぶられる犯罪があっただろうか。
 不器用で純粋な「容疑者X」が見せる、壮絶なまでの「献身」。悲しすぎる結末に涙が止まらない。